武士道シックスティーン

さあ、始めよう。
わたしたちの戦いを。わたしたちの時代を―――――。

青春剣道小説は、のっけから、大仰なセリフで始まる。
知ったのは、読売新聞の書評を見て、方向性の全く違う2人の少女が、互いに剣道で競い合う、という部分が、ヌルオタ心に強く響いた次第。

中学時代、ある市民大会に、全中2位という実績を引っ提げて出場した磯山香織は、同い年で、日舞から剣道に転向して三年にも満たない、無名の選手に敗れる。
その選手の名は、甲本早苗。
この一敗にこだわる香織は、早苗と再戦すべく、彼女と同じ高校へ進学する。

全編を通して、「女子剣道部」という枠の中で話が動くためか、ありがちな恋愛要素は影も形もない。その部分のドロドロを排した分、読後にはスポーツドリンクをスカッと飲み干した時のような爽快感がある。
ただ、冒頭のスケールが大きいだけに、早苗にはもう少し、香織とタメを張れるだけの力を与えて欲しかったと思う。「競い合う」というには、2人の実力差がかなり大きく、背負っているものも、その性格のせいか、香織の方の印象が強い。それはそのまま、キャラクターの印象ということにもなる。
早苗のほんわかした感じを、香織の剣呑とした空気がそのままズバッと突き破っているような。憧れるのは香織だけど、愛されるのは早苗かな…*1

武士道シックスティーン

武士道シックスティーン

*1:いきなり論点がずれた