インド 11月11日

ヴァラナシ。近年改名したという、北部インドの、少し東寄りに位置するこの都市は、日本で最も名の売れている街、ということになるだろう。
ヒンドゥー教の聖地にして、母なるガンガーを臨むこの街は、だが、ここまで見てきたインドと大して変わりないように映った。
「うわ、寒い」
早朝、5:15のヴァラナシは、上着を着込んでも、若干肌寒いくらいだ。
日はまだ昇らず、周囲は暗い。橙色の街灯と、リクシャ引きの、浅黒い肌にの中でギラつく目だけが、当面の明かりだ。
「宿は?」
「去年泊まったところがあるから、そこに行こう。ガンガー見る?チェックインまで、まだ時間あるし」
「ん〜…じゃ、折角だから行こうか」
舗装されているのは駅前の道だけで、通りを折れると、すぐに悪路に切り替わる。体が上下左右に揺さぶられ、ゴツゴツした感触の伝わってくる尻が痛い。
サイクルリクシャを、次々と大型のツーリストバスが追い越していく。
「やけにバス多いね」
「欧米人旅行者でしょ。朝のガンガー見るんだよ」