アフタヌーン 4月号

気になった作品と四季賞の話なんぞを。

  • 新☆連載

薬師寺涼子の怪奇事件簿が登場。なんというか、アフタヌーン界隈では滅多にない大型移籍だと思う。
ここから三ヶ月間は新連載祭りということで、不良債権の整理がついてくれるのは嬉しい(るくるくは別として)。面白い連載が始まってくれ。(希望)



また新連載ではないが、萩尾望都の読み切りも載るという。こっちも楽しみ。


技量が問われる設定だなと思うが、それをしっかり読ませてくるとよ田みのるやっぱスゲー、と。

宇宙人である道明寺はこの場合読者の依代になっていて、「大人の常識」に対しての疑問や問題提起を度々行ってくる。




主人公の直行は、「大人の心、常識、知識を持ちながら小学生になる」という、ある種のロマンスを体現した人物として描かれるが、その「大人の部分」を行動原理とするが故(仕方ないんだけど)に、子供達の中では浮いて、空回りする。
でも、この前後の「友達が必要なんだ!」という決意は、どちらかというと教師よりの発想であって、そこを感じ取ったから、キョーケンも反発してぶつかり合いが起こる。




で、このぶつかり合いというのも非常に漫画的というか、極端な描き方ではあるんだけど、一連の流れが一々熱くて決まっている。見開きへの持ってき方や構図もすごく印象的。





動のあとの静のコマに、良くこんな表情を持ってくるなと思う。これを見る限り、友達を100人作るまでもなく、既に道明寺は「愛」を感じているのではないか?すなわち「愛」の存在は立証されているのではないか?
この辺りのこともやがて明らかになる…かもしれない。
友達を100人作る、といっても、1980年代の小学校も1クラス40人前後のはずで、残りの60人はどうするんだろう、とか。
まだまだ気になる友100(この略し方を定着させたい)が熱い。




  • からん

ストレートに柔道一直線物かと思ってが、今のところ部内の人間関係が非常に濃密に描かれている。
主人公である高瀬雅のモチベーションが謎で、もう片方の主人公・九条京の方も伏線が張られるばかりということもあり、結構もどかしい。
大石先輩、空手でも結構な強さだっただろうに、何で柔道に…。




祝!単行本発売!
通常連載に昇格して、これで安心して毎号読むことができる。
東京上空に飛来した120mの外星人の飛行物体が、その直下の地域の重力を8分の1にしてしまう、というのがあらすじ。
今回は、のほほんの中に「一歩間違えば大災害」という本当にシリアスな雰囲気を忍ばせており、どこか緊張感の漂う話となっている。…まぁ、結果としていつも通りののほほんだったわけだけど。
この辺りの、こっちを良い意味でドキドキさせる回は、たまに混ぜてほしい。




ひたすらに重い。たまに晴れたかな、と思ったら、一転欝の方にメーターが振り切れる。
そして、漸く育児以外の要素が入ってきた。そう、男親の存在である。ここまで、明らかにその「不在」を「存在」させてきたのだが、それをはっきり分かる形で示した。
パートナーがいない母親は、育児の労苦というのを自分一人で背負わなければならないことが多い。ぢごぷりでは、妹のかなめが育児のパートナーとして存在しているが、この設定がなかったら、もっとリアルに悲惨な話を描くことになっていただろう。
ちなみに看護学校で「母性看護学」という教科で授業があり、実習もその手のところに行って、育児相談に乗ったりする。…こんな感じのお母さん達に、わんさと会うことになるんかなぁ。




  • VINLAND SAGA

まさかここで王様ぶっ殺すとは思ってなかった。予想外の展開で一気に面白く。



四季賞で久しぶりに「冊子取っとこう」と思えるような作品が大賞を取った。
良く考えられていて、雰囲気との相性も良い、読ませる作品。

今より少し先の未来、家庭相談員のカノセは、集団生活団体・WOLVSに所属していた一家を訪ねる。
WOLVSは、会員に遺伝子改造を施した「人権侵害」の嫌疑で強制解散させられ、所属していた家族は外の世界で生活することを余儀なくされる。
そこで、自治体から委託された、カノセたち家庭相談員が、そんな家庭の子供達と外界との橋渡しをするために派遣された。
カノセの担当は笛音家の「リタ」という「限りなく女に近い男」の子。
リタは学校に通い、苛められているのを助けてくれた支辺マキと仲良くなるが…

このお話、基本的に設定がストーリーの重要なファクターなので、それを交えつつ説明するのがエラい面倒だな…ということに書き始めてから気付いた。
…えー…、ホント勝手にリンク飛ばさせてもらってすいませんが、id:sakstyleさんのグレッグ・イーガン「暗黒整数」/庄司創「三文未来の家庭訪問」 - logical cypher scape2が、きちんと概要をまとめてらっしゃるので、そちらを参照してもらった方が、よりキチンと分かるかと。




男性や女性の違い、ジェンダーをテーマにした作品であるが、主要登場人物の一人、カノセがそもそも男か女かはっきりしない造形(女の人なんだけど)であるところに、作者のユーモアを感じる。
このカノセさんがヒジョーに俗物で、良い味を出している。

担当した子供の前で、「君達がお金持ちになってくれると、わたし達もウハウハなのよー」と本音を隠そうとしないカノセさん。

リタたちが金になりにくいと知って、他の相談員に子供のトレードを持ちかけるカノセさん。

甘酸っぱい想いに浸るリタに、的確なツッコミを入れるカノセさん。

「ああ、実は子供のためを思っているんだ…」と思わせておいて、次のコマで本音を出して全部ぶち壊しにするカノセさん。

内心、マキたちに容赦ないツッコミを入れるカノセさん(しかも盗み見)。
と、まぁこんな感じに、線だけで描いたような無表情から、人間臭さを存分に発揮してくる。…ただ、表情に出にくいのでいやらしさがは減じているか。



お話の中では、リタが「男」か「女」で様々な軋轢や葛藤を生まれる。
支辺マキとの恋愛模様も、どこかすれ違いだ。リタ自身は、自分が男である、という認識で行動しているのに、マキはリタを女の子として見て、間近にまで迫るのことも抵抗がない。


でも、実はマキも男の子として意識している、というシーンがあとから出てきて、なんだかこの辺のすれ違いはニヤニヤが誘発されてしまう。あー、もう二人とも可愛いな、と。
このお話、もし連載するとしたら、マキのことを「うちの学校で、一番いい女だと思ってんだけど」と素直に(リタにだが)告白した名も無き男の子も絡めて、もっと作り込んでいく様を見てみたいなあ。





しかし、今回は引用が多くなってしまった…ダイジョウブ…かな?

月刊 アフタヌーン 2009年 04月号 [雑誌]

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