古橋秀之 多分その2

全部を読んだ訳ではないし、全部が傑作な訳でもない。
でも好きな作家といえば、1位はこの人。以下ケイオス・ヘキサ三部作以外で読んだ作品について適当に。

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

これなんてワンダと巨像?というのが最初の印象。視覚的なイメージは、このゲームから着想されたんじゃないかなぁ、と。ゲームの発売の方が前だから、単純にそう思った次第。*1
ちょこちょこ他の感想を覗くと、やはり「ちょっと短い」てのと「読後感が爽やか」てのが目立つ。大まかな印象は同じです。
相変わらず、台詞回しが自然で、ラノベにありがちな鼻に付く感じがない。
最近思うのは、古橋作品って大人だよなぁ、ということ。枯れてる、とも言えるが、大人な文章を書けるラノベ作家って、あまりいないんじゃないか。
全体的にロシアテイストを入れるのは、お禿様*2といい、こういう感性の人たちに共通の感性なのか知らん。
あと、ジェーニャの完璧なツンデレっぷりに吹いた。



サムライ・レンズマン (徳間デュアル文庫)

サムライ・レンズマン (徳間デュアル文庫)

高校の頃ジュブナイルをよく読んでいたせいもあるが、SFって基本的に嫌いではない。
構成的にやや煩雑な感があるが、最後まで息を付かせず、ハラハラドキドキを維持しながら読める作品。
登場人物にも一ひねりあって、事実上ヒロイン的な位置付けのキャットは、ツンデレと言うほどにはクザクと好い仲になるわけでは無し、クザクも主人公というには、最後まで感情を押し殺しているせいで感情移入という点で、若干ケチが付く。
裏主人公というべきは、敵役であるデイルズと、レンズマンの長たるキムボール・キニスンだろう。古橋作品の敵役らしい、絶対的な狂気と悪を持つデイルズと、アメリカンテイスト溢れる「まさに主人公」キニスンは、作中で実に生き生きと、自らの役割を全うしているように感じる。
文章も、正調SFらしい翻訳調で書かれ、古橋氏の新たな一面を見せる作品となっている。

*1:未プレイ。いつも通りT氏のプレイ画面を見たのみ

*2:キングゲイナーの舞台はシベリアだった