蒼天航路

読んだのはKCコミック版の方なんだが、そっちのリンクを貼っちゃうと36巻分になるんで、文庫版の方で。これでも十分長い。
年代によっても分かれると思うが、多分「三国志」というくくりのマンガでもっとも有名なのは、いわゆる横山光輝三国志。横山先生自体の解釈も加えられているとは言え、小説の吉川版三国志をベースにした教科書的三国志*1である。
そんな横山版と比べても遜色のない大作が、蒼天航路
大幅に曹操に寄って描かれた、「三国志」というよりは曹操の一代記と言っても良い。乱世の奸雄と呼ばれた男が、如何にして生きたのかを、独特の雰囲気を持つ絵と、エネルギーに溢れたストーリー構成で、余すところ無く描き切っている。このマンガにおいては、従来の三国志にまつわる創作物でほぼ必然のように主人公であった劉備すら、脇役の一人に過ぎない。(とは言え劇中においては、劉備だけでなく、関羽張飛にも、それぞれ他の脇役キャラ以上の見せ場が与えられているのだが)
横山光輝*2、その記号的なマンガ表現では必ずしも描ききれなかった、登場人物の「生きている姿」を、王 欣太は見事に描く。
特に秀逸なのは、まず劉備で、しぶとさや器の大きさはあるものの、途中までは徹底的なまでに俗物として描かれ、いわゆる「正統的な」劉備像をことごとく破壊している。
次に袁紹官渡の戦い以前では、名門を鼻にかけたエリート意識の高い男というだけだったが、曹操との最終決戦に臨むにおいて、いわゆる「王者の戦い」を率い、曹操に対抗しうるまでの「怪物」に成長した。
また、戦場での戦いもさることながら、「国を治める」ことについて、前半は太平道と、後半は目に見えない敵「儒」と曹操との、これまた壮絶な戦いが描かれている。
横山版三国志と並ぶ、三国志の至高の傑作。

蒼天航路(1) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(1) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(2) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(2) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(3) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(3) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(4) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(4) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(5) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(5) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(6) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(6) (講談社漫画文庫)

蒼天航路 (7) (講談社漫画文庫)

蒼天航路 (7) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(8) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(8) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(9) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(9) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(10) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(10) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(11) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(11) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(12) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(12) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(13) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(13) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(14) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(14) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(15) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(15) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(16) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(16) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(17) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(17) (講談社漫画文庫)

蒼天航路(18)<完> (講談社漫画文庫)

蒼天航路(18)<完> (講談社漫画文庫)

一気に通読したのは初めて。きっかけは、前回部活の同期との飲みで、昼間っから遊んでいたS水とゲーセンに入った折、カードゲームのレストスペースに、閲覧自由な横山版三国志蒼天航路が備え付けてあり、これに目を惹かれて読み始めたため。2人ともマンガ好きなので、危うく集合時間までかけて読みつくすところだった。
で、次の機会は地元のブックオフ。ここで5巻まで読んで、「ああ、もう全巻読まないと引っ込みが付かない」という心境となり、ネットカフェへ。
5時間パックで長期戦に突入したものの、時間内に読み終わらずに、結局更に3時間かけて漸く読破した。
…最初から8時間パックにしとけばよかったよ…。orz

*1:原作の忠実な再現という意味で

*2:それが横山先生の作風であるから、意図的にはないにしろ