滝沢聖峰と小林源文

戦記マンガなら、この人で決まりだな、と言う漫画家が2人いる。それが滝沢聖峰小林源文だ。
この種のマンガは、ジャンル的な幅が非常に狭いので、ファン層の薄さに比例して漫画家の層も薄いせいか、まず画力の面において「ちょっとな…」という人が少なくない。
この2人に関しては、それぞれの絵にオリジナリティがあり、知識も豊富なので安心して見ていられる。
滝沢聖峰は、淡々とした絵柄とストーリーが良くマッチしている。ストーリーは、「マンガ」として見た場合、盛り上がりに欠ける*1のが難点かな…。空の話が多く、地上の話は珍しい。

幻の豹―The panther in Ukraina 1950 (MGコミック)

幻の豹―The panther in Ukraina 1950 (MGコミック)

まだ初期の作品。「ウクライナ混成旅団」では、抑留者の民主化運動について触れられており、「人間」というものの本質的な弱さが描かれている場面がある。…理想論からいけば、この世に具現化した社会主義共産主義って歪んだものなのよねどれも。
撃墜王―太平洋航空決戦録 (アリババコミックス)

撃墜王―太平洋航空決戦録 (アリババコミックス)

「編隊空戦指令」は、鹵獲したB−17を司令塔とし、チームを組んで空戦に望む航空隊、という珍しい発想の話。
蒼空の咆哮―Battle illusion (MGコミック)

蒼空の咆哮―Battle illusion (MGコミック)

「鬨声」。対B−29の防空戦を、桜田門外の変にクロスさせて描いている。詩的な構成で、この本の中では一番気に入っている話。
以上ここまでが短編集。蒼昊の銛手と最後のト連送が続き物で、この本の中では一番好き。意地でも通常攻撃を身上とし、貫き通す「雷撃の鬼」黒崎分隊士がカッコいい。マレー沖海戦を知らない世代の少年航空兵が、最初馬鹿にしていた2人を尊敬するようになる件が好き。
飛燕独立戦闘隊―103rd.Indep.F.Co. (MGコミック)

飛燕独立戦闘隊―103rd.Indep.F.Co. (MGコミック)

「秘めたる空戦」を原作にした一冊。主人公が、徐々に一人前の戦闘機乗りになっていくところが丁寧に描かれている。
隊長との師弟関係を抜きにしては語れず、撃墜される前後のエピソードは切ない。
迎撃戦闘隊―ニューギニア航空戦 (学研M文庫―Comic)

迎撃戦闘隊―ニューギニア航空戦 (学研M文庫―Comic)

帝都邀撃隊―迎撃戦闘隊・本土防空編 (ボムコミックス (64))

帝都邀撃隊―迎撃戦闘隊・本土防空編 (ボムコミックス (64))

連作。南方に配属された主人公が、ニューギニアを中心に戦い、「帝都邀撃隊」では本土に戻ってからの戦いを描く。「飛燕独立戦闘隊」とは違って、いわゆる「マンガらしい」ストーリー構成がなされている。主人公とともに最後まで戦い抜くパイロットは皆無で、戦争が以下に多くの人を奪って行ったのかを想うと悲しい。





次が小林源文。つっても持ってるのは猫の糞一号のみ。

Cat Shit One VOL.0 キャット・シット・ワン 0巻

Cat Shit One VOL.0 キャット・シット・ワン 0巻

レビューは前にも書いたか。ベトナム戦争の擬獣化マンガ。アメリカは、「USA」の「GI」で「ウサギ」。ベトナムは猫、日本は猿、韓国は犬、中国はパンダ、ソ連は熊、オーストラリアはコアラとカンガルー、フランスは豚、イギリスはネズミ、という擬獣化が施されている。

*1:リアリティがあると言う言い方も出来る。