インド 11月18日 その4

街灯がないせいで、ラクソウルのはっきりとした姿を目にすることはできない。闇の中にギラギラと光る目は、バスから降りてきた乗客を待ち構えるリクシャ引きのおっさん達だ。
到着は18時15分。追い縋ってきたリクシャのおっさんが、
「イミグレは6時で締まるんだよ」
と異な事を仰る。どうせ、こっちを乗せようと思って適当な嘘こいてんだよな〜、とインドずれした頭でその言葉を聞き流し、テクテクと国境へ。
ところがイミグレーションに着くと、「『ネパールの』イミグレが6時までだ」という。つまりインド側からは出国できるが、ネパールに入国できないという罠。




で、ここで重大問題発生。
俺の出国カードが普通じゃない。インド入国の時にもらう筈の、入国スタンプを押した半券が無いのだ。
今からよくよく思い出してみれば、確かに歩き方に書かれていた、「出国カードはこういうもの」というカードと、俺が出国カードと思ってもらったカード*1は違う。
「Problem.Must This card」
先に山田FBが提出していた正規の出国カードを示しながら、シーク教徒の出国管理官がその言葉を吐いた時、本当に血の気が引いていたと思う。
さすがにここの交渉は、山田FBが不調を押して前に出た。
言い合いをボンヤリと(またも他人事)眺めながら、それでも自分なりに頭を働かせて、「あー、このままだと、ネパールはおろか、大使館にでも行かないと帰れねーんじゃねーか俺は」、と。
インドで一人立ち尽くし坊主…か。予期せず。
「とりあえずこの時間じゃネパールにも入れないし、埒が明かないから、泊まろう」
交渉を切り上げた山田FBが言った。
この、今俺が持っているよく分からねー半券が、明日になったら何かの間違いで、それを見せたら通れるようにならないかなぁ、とか。そんなことばかりグルグルと頭の中を回っていた。
その後も着いて来たリクシャのおっさんには「じゃあ、明日5時15分に迎えに着たら乗ってやる」と言って別れ、宿を取って食事に出た。
薄暗い照明の、メニューも、スプーンもフォークもない食堂で、初めて食べたシークカバブは、塩も良く利いていてなかなか旨かった。スプーンがないというので、インドで初手掴み飯。ボロボロこぼれるこぼれる。全然上手く食べられない。
宿は共用シャワーがあったが、夜だし、薄暗いし、水しか出ないので諦めた。
ツインベッドは硬く、薄汚れた、キャラクター物の毛布が一枚敷いてあるだけだ。
湿った空気の中で、天井を見上げ、口数も少なく。

*1:複雑