無事生まれて育ったという幸運

今回の卵円孔は、解剖生理学の先生の専門が発生学だったことから課題になったわけだが、参考文献を調べるにつけ、「ああ、なんだか無事に生まれてきたのって幸せなんだなぁ」と実感した。
発生学は、精子卵子が結びついて胚子となって、その胚子から、文字通り人間が「発生」していく様子を対象にした学問である。人間の大元ができる段階であるから、ここでその人間の設計図にちょっとしたミスがあったりすると、その影響は「奇形」という結果になって表れる。
いわゆる先天性異常というヤツだ。脳が丸ごとない無頭症、唇が裂けている口唇裂、耳介が無い、目が一つしかない、手足がない、双子が溶けたように癒合している、肛門が開いていない…等等、そのままネットにアップすれば「ブラクラ」あるいは「グロ画像」と呼ばれるに違いない症状が、ごく普通に掲載されている。*1
本当に様々な先天性異常の事例があり、人は(受精段階から)常に危険因子と隣りあわせで育っていると感じる。
生まれてから後の危険因子は、多少なりとも自分や周囲の意思で、予防なり回避なりが可能だが、染色体異常なんかは、少なくとも生まれてくるまではなかなか把握できないわけで、そういう意味では天災に近い。遺伝子レベルのちょっとした違いで、ほんの指呼の差が、「正常な身体」か「異常な身体か」を隔ててしまう。





ただ、先天性異常は、母体の飲酒、喫煙、麻疹などの感染症など、母体の意思で予防可能な発生原因も多い。妊娠した女性は、(病気は多少不可抗力の面があるにしろ)予防が可能な、胎児が危険に晒されるような行為は、絶対にしないで欲しいと思う。本当にわずかな要素が、子供が無事に、健康で生まれてくるかどうかの分岐点になりうるのだから。

*1:そういう本だから当たり前だが