東方三部作 ブラックロッド ブラッドジャケット ブライトライツ・ホーリーランド

ブラックロッド (電撃文庫)

ブラックロッド (電撃文庫)

ブラッドジャケット (電撃文庫 (0176))

ブラッドジャケット (電撃文庫 (0176))

ブライトライツ・ホーリーランド (電撃文庫)

ブライトライツ・ホーリーランド (電撃文庫)

ケイオスヘキサ三部作とも、東方三部作とも呼ばれる、ライトノベル作家古橋秀之の代表作。
ライトノベルを知るきっかけになったのが古橋秀之というのは、割と少数派ではないのか知らん?
彼の作品の一貫した特徴は、他の作品に見られない「気取って見えない軽妙な」会話であったり文章であると思うのだが、この三作には当時ライトノベルでは異色な(今もか)和製サイバーパンク的な世界観と、宗教色の強い用語の数々、体言止めを多用した簡潔な文章、全編を彩るグロ描写など、「黒古橋」と呼ばれるその魅力が全開な作品に仕上がっている。
信者と言われようとも、ライトノベル史上の最高傑作に挙げなければならないのが、やはりブラックロッド

多重積層都市・ケイオスヘキサ。その最下層を舞台に、公安局の魔導特捜官・ブラックロッドと降魔局の妖術技官・ヴァージニア9は、公安本部から封印された悪魔を盗み出した怪人、ゼン・ランドーを追跡する。
一方、ビリー・龍を名乗って最下層で私立探偵を営む、源吸血鬼・ロングファングは、マグナス・クロックワークス社のエージェントから、失踪した社員を探して欲しいとの依頼を受ける。

やがて交差する二つの物語。風呂敷の畳み方も、ストーリーの構成自体も鮮やか。ここまでのストーリーが、わずか200Pで纏められている。
雨宮慶太の挿絵も、おどろおどろしく、雰囲気にピッタリと合っている。…今の電撃で雨宮を起用するのは無理だろうなぁ。







続編のブラッドジャケットは、ネットで評判を見る限り「ブラックロッドより良い」という評価が支配的なようだ。俺は逆の評価だが。ブラックロッドより時代を前に設定し、吸血鬼・ロングファングに焦点を当て、その謎を解き明かしていく。
登場人物の壊れっぷりはこちらの方が上。…だが、どうにも挿絵で損をしているようにしか見えない。







最終作ブライトライツホーリーランドは、三部作の集大成的な位置付け。主人公に、「史上最悪の魔術師」スレイマンと、ロングファング、そしてブラッドジャケットにも登場した元機構折伏隊・ナムの3人を据えている。
話のスケールは前2作を上回るが、小説として成功しているかどうかは微妙。最後はほぼ投げっ放しだし。東方三部作の中では駄作。





古橋秀之という作家がいることを、電撃文庫はもっとアピールするべきだ。*1
この作品と作者に、十代で出会えたことに感謝したい。

*1:本人が寡作過ぎてアピールしようにもできないのかもしれないが