宇宙の勝利者

2年前の今頃に、宇宙の勝利者についてのエントリを書いた。
こんな感じに。

粗筋は、人数が少ない版の「11人いる!」だと思って差し支えない。

20世紀の地球に宇宙人が降り立ち、「宇宙連合」の存在と、地球人が恒星間航行可能な宇宙船を作ることができれば、その「宇宙連合」に加盟できるが、宇宙人はその手助けをできないと告げる。
地球の各地区から、20人の若者を選んで宇宙人教育を受けさせることが決定され、アメリカでは、高校生300万人の中から、ジム、エレン、カートの3人が選ばれた。
3人はネズミに似た人型宇宙人のピープとともに地球を出発するが、宇宙船は事故にあい、地球人に似た「モーレグ族」、カンガルーに似た「ワラット族」、トカゲに似た「ノイフ族」の、3種族の人類が住むクェバール星に不時着する。
クェバールの人々に正体を悟られず、かつ自分たちの知識や情報を漏らさずに、救助信号発信装置のある、アンノーンという島までたどり着かなければならないのだが…。

ジムは物理学、エレンは社会学、カートは歴史学を多少勉強しているのだが、その3人がもっと自分たちの特性を生かした行動を取った方が面白かった。
カートには、宇宙人を敵視する「地球至上主義者」という美味しい設定まであるのに。
こういう風に、少年たちが協力して困難を乗り越えてくっていうのは、今読んでもワクワクする。
内容はジュブナイルだけあって少々複雑さに欠けるが、肩肘張らずにサラッと読める。

実はこれとほぼ同時期に、同じ岩崎出版のSFロマン文庫刊、「宇宙の漂流者」と、それを復刊.comで復刊させた「宇宙のサバイバル戦争」のことについても触れている。
この当時は、SFロマン文庫、全30冊の内10冊のみの復刊だったのだが、08年現在では全巻の復刊がなされた模様。
この「宇宙の勝利者」も、タイトル、文章はそのままに、カバーイラストと挿絵を差し替えて刊行された。感想については2年前に触れているので、「宇宙のサバイバル戦争」の時と同様、イラスト比較を今回もやってみたい。
まず表紙。
   
左が旧版で右が新版。
旧版は写実的な絵柄だが、新版のイラストはだいぶサイケデリックな印象。色使いが結構どぎつい。設定では主人公格の3人はアメリカ人なのだが…無国籍な顔立ちになってしまっている。






   
続いて船内で初対面する3人。旧版だとバタ臭いエレンが、新版だと今風に可愛くなってるw。カートの地球主義者たる由縁、三銃士風の格好はほぼそのまま。ピープは旧版だと小人にネズミの頭をくっ付けた感じだが、新版ではRPGに出てくる獣人ぽい。






   
宿でワラット族の酔っ払いと格闘してる場面。…新版見難い。若手のイラストレーターだから仕方ないのか…。





   
モーレグ人の港湾部長。イラストレーターの個性が一番発揮された一枚w。旧版では「怪奇!鰐男!」の風情が漂うが、新版では更に想像力を膨らませて、旧版が見る影もないクリーチャーに仕上げてしまった。作中では種族が「温血動物」と「冷血動物」という点が、物語の展開上非常に大きな伏線になっていて、冷血動物=爬虫類=ワニという旧版の連想させ具合は的確で分かり易いと思う。安易だけど。
しかし…新版は…なんか爬虫類さえ連想できない。クリーチャーとしか言い様がない。




ここからは比較になるイラストがあまりなかったので、旧版の古き良きSFジュブナイル用挿絵をお楽しみください。
                     


宇宙の勝利者 (SFロマン文庫 (13))

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宇宙の勝利者 [SF名作コレクション(第2期)]

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